政策の失敗が招いたインド大停電(社説)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV02002_S2A800C1000000/
[FT]政策の失敗が招いたインド大停電(社説)


発送電分離 って、どこがいいのか、よく分からない。。

(2012年8月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 インド政府は10年前、海外向けの宣伝に「驚きに満ちたインド」というスローガンを掲げた。しかし今週、大規模な停電に見舞われ、国民の半数以上が不便な生活を強いられた同国には、「力不足のインド」という表現のほうがふさわしく思える。

■非効率な発送電の仕組みが問題

インドは今週、大規模な停電に見舞われた(8月1日、インド北東部のグワハティ郊外)=AP
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インドは今週、大規模な停電に見舞われた(8月1日、インド北東部のグワハティ郊外)=AP

 停電の直接の引き金が、政府の力の及ばないところで起きたのは確かだ。雨期に干ばつが続き、農民は地下深く掘った井戸から地下水をくみ上げるのに通常より多くの電力を使わざるを得なかった。また雨不足で水力発電所の稼働率が低下し、電力供給に支障が出ていた。

 だが、十分な電力インフラが整備されていれば問題にならなかったはずだ。実際には政府が犯した重大な失敗によって、目を覆わんばかりの非効率な発送電のプロセスが残されていた。

 今回の大停電は複数の地域送電網がダウンしたためとされる。運営を担っているのはたいてい国営企業で、多額の政府補助金を背景とする低価格で農家や個人利用者に電気を供給する。こうした企業は効率性向上に必要な投資を行うことができない。

■民間企業の参入促進や規制緩和

 ひとつの解決策は、商業ベースで送電網の運営ができるような民間企業参入をもっと認めることだ。こうした参入がすでに実現したニューデリーやムンバイなどでは、電気料金が上昇した代わりに、サービスの質が大幅に改善した。

 政府は発電についても見直す必要がある。2000年代初めに民間発電業者を認めたことで、発電能力増強という喜ばしい成果がみられた。しかし、石炭やガスなどの燃料を国内で十分調達できないため、発電会社はより高価な輸入燃料に依存することとなり、電力供給が伸び悩む原因となっている。

 燃料の国内供給拡大を後押しする最善策は、投資家に対する規制要件を緩めることだ。

 石炭の場合、政府は鉱山の民間所有を禁じる規制の緩和を検討すべきだ。インドは民間企業がもつ先進技術や優れたノウハウを導入することで大いに恩恵を受けるはずだ。

 インド政府がこれまでに示した対応策は、調査委員会を設置して原因を究明する方針のみ。これを口実にして、着手が遅れた政策に背を向けるようなことがあってはならない。今週の停電は、力強い経済大国を目指すインドにとって受け入れられないものであるはずだ。